2013/5/20 5:28

コンパクトミラーを眺めながらリップを塗り直して、Yさんがくるのを待っていた。
宿泊者以外立ち入り禁止の表記が赤字で書いてあって、少しやりすぎだと率直に思った。
あれでは趣を損なってしまうけれども、今日は宿泊者だから心配はいらない。
一流のホテルらしくロビーにはウッドチェアが綺麗に並べてあって、
そこからはガーデンが見渡せた。初夏のひざしはそれなり強くて、木々がとても美しかった。
Yさんといっしょにスペイン風のシガーBARに入って、二人ともアイスコーヒーを飲んだ。
とても苦くて私の好みだった。実際に会うのははじめてだからお互いに緊張していたけども、
いろいろなものでつながっていたから初対面っていう感じじゃなかった。
当たり前のようにして村上龍さんの作品についておしゃべりをしたあとで、
Yさんに誘われてシガー専用ルームへ生まれてはじめて入った。
そこには見渡す限りいろいろな葉巻が並べられていた。
Yさんに聞いてみるとほとんど全部がキューバのものらしい。お値段はとても高いけれど、
葉巻について何もわからない私でもいい香りを楽しめた。
席に戻ってから、アイスコーヒーを飲みつつ、Yさんはシガーに火をつけ味わっていた。
葉巻から白い煙が少しずつ舞いはじめた。
隣の席には紳士淑女風な人が座っていて、ウエイターさんとなにやらおしゃべりをしてた。
あとで知ってビックリしたけども、Yさんが葉巻を吸っていたのを見て、
顔をしかめてウエイターに愚痴をこぼし、席を移動したらしい。
入口には日本語と英語でそこが「シガー・BAR」であることがかかれているし、
それくらい気づかなかったんだろうかと思いつつ、ひどく気分が害された気がした。
思わずダチュラ!と心の中で叫んでしまった。
イタリアンに入って、隣の人がイタリア語で話をしているから席を変えてくれと言っているのと
同じくらいに馬鹿げていると思った。
でもウエイターさんの対応は完璧で、ここのシガーBARにはまた来たいなって思えた。
Yさんのジッポは純銀製でとても重たくて、いろいろな過去がつまっているものだった。
少しだけへこんだヘッドの部分にも深い物語が刻まれていた。
私は男性が喫煙するときには女性が火をつけるものだと今でも思っているけども、
自分のペースのほうがやりやすいからということだったから私は火をつけなかった。
それもわかる気がした。お酒とかでもグラスの残りが三分の一くらいになると
際限なく注ぎ続けるのはあまり上品じゃない。
キューバのシガーの香りは私がその日つけていたエリザベスアーデンの香水よりもはるかに上品で、
そこからタバコを連想することは私にはできなかった。その香りは、超一級品の奈良の香木のようだと思った。
私は自分では吸えないけれども、素晴らしい香りに酔いしれた。苦めのアイスコーヒーと
初夏の微妙に強い日差しと、キューバの葉巻きとが溶け合って、私のカラダの中に溶け込んでいった。
キャッシャーの少し後ろに並べられていた葉巻や素晴らしい工芸品とかに見入っていた。
私は割り勘が好きじゃない。オカネを出したくないとか節約したいからではもちろんなくて、
せっかくの洗練された雰囲気のあとでサイフを取りだして結局はひっこめることになるのがわかっているのに、
わざわざそれをするのがイヤだから。
私の分はおいくらでしたっけ? いや、ここは私が出すんで。
え、でもよろしいのでしょうか? すいません、なんだか。
そういったやりとりの全部がなんだか好きじゃない。エレガントさに欠ける気がするから。
オカネの問題ではないんだと思う。だけどおごっていただけることには本当に感謝している。
おごってもらって当たり前なんて思ったことは一度もないし、そうはなりたくない。
お店をあとにするときにも、Yさんからはまだキューバの香りがしていた。
きっとこれから葉巻の香りに出会うたびに、Yさんのことを思い出すんだと思う。
↓ひさびさに SM FOCUS さんにクリックしていただけると嬉しいです。


コンパクトミラーを眺めながらリップを塗り直して、Yさんがくるのを待っていた。
宿泊者以外立ち入り禁止の表記が赤字で書いてあって、少しやりすぎだと率直に思った。
あれでは趣を損なってしまうけれども、今日は宿泊者だから心配はいらない。
一流のホテルらしくロビーにはウッドチェアが綺麗に並べてあって、
そこからはガーデンが見渡せた。初夏のひざしはそれなり強くて、木々がとても美しかった。
Yさんといっしょにスペイン風のシガーBARに入って、二人ともアイスコーヒーを飲んだ。
とても苦くて私の好みだった。実際に会うのははじめてだからお互いに緊張していたけども、
いろいろなものでつながっていたから初対面っていう感じじゃなかった。
当たり前のようにして村上龍さんの作品についておしゃべりをしたあとで、
Yさんに誘われてシガー専用ルームへ生まれてはじめて入った。
そこには見渡す限りいろいろな葉巻が並べられていた。
Yさんに聞いてみるとほとんど全部がキューバのものらしい。お値段はとても高いけれど、
葉巻について何もわからない私でもいい香りを楽しめた。
席に戻ってから、アイスコーヒーを飲みつつ、Yさんはシガーに火をつけ味わっていた。
葉巻から白い煙が少しずつ舞いはじめた。
隣の席には紳士淑女風な人が座っていて、ウエイターさんとなにやらおしゃべりをしてた。
あとで知ってビックリしたけども、Yさんが葉巻を吸っていたのを見て、
顔をしかめてウエイターに愚痴をこぼし、席を移動したらしい。
入口には日本語と英語でそこが「シガー・BAR」であることがかかれているし、
それくらい気づかなかったんだろうかと思いつつ、ひどく気分が害された気がした。
思わずダチュラ!と心の中で叫んでしまった。
イタリアンに入って、隣の人がイタリア語で話をしているから席を変えてくれと言っているのと
同じくらいに馬鹿げていると思った。
でもウエイターさんの対応は完璧で、ここのシガーBARにはまた来たいなって思えた。
Yさんのジッポは純銀製でとても重たくて、いろいろな過去がつまっているものだった。
少しだけへこんだヘッドの部分にも深い物語が刻まれていた。
私は男性が喫煙するときには女性が火をつけるものだと今でも思っているけども、
自分のペースのほうがやりやすいからということだったから私は火をつけなかった。
それもわかる気がした。お酒とかでもグラスの残りが三分の一くらいになると
際限なく注ぎ続けるのはあまり上品じゃない。
キューバのシガーの香りは私がその日つけていたエリザベスアーデンの香水よりもはるかに上品で、
そこからタバコを連想することは私にはできなかった。その香りは、超一級品の奈良の香木のようだと思った。
私は自分では吸えないけれども、素晴らしい香りに酔いしれた。苦めのアイスコーヒーと
初夏の微妙に強い日差しと、キューバの葉巻きとが溶け合って、私のカラダの中に溶け込んでいった。
キャッシャーの少し後ろに並べられていた葉巻や素晴らしい工芸品とかに見入っていた。
私は割り勘が好きじゃない。オカネを出したくないとか節約したいからではもちろんなくて、
せっかくの洗練された雰囲気のあとでサイフを取りだして結局はひっこめることになるのがわかっているのに、
わざわざそれをするのがイヤだから。
私の分はおいくらでしたっけ? いや、ここは私が出すんで。
え、でもよろしいのでしょうか? すいません、なんだか。
そういったやりとりの全部がなんだか好きじゃない。エレガントさに欠ける気がするから。
オカネの問題ではないんだと思う。だけどおごっていただけることには本当に感謝している。
おごってもらって当たり前なんて思ったことは一度もないし、そうはなりたくない。
お店をあとにするときにも、Yさんからはまだキューバの香りがしていた。
きっとこれから葉巻の香りに出会うたびに、Yさんのことを思い出すんだと思う。
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